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中西先生「戦略経営デザイン論講座」第11回目 受講レポート(1)

2012年10月16日

2012年10月16日(火)、第11回戦略経営デザイン論講座が開催されました。
受講生の小田さんより、今回のテーマである、”価値創造成果を、時代をこえて「成功実証事例」から学ぶ”についてのレポートをまとめていただきました!

作成者:
小田 哲也(コンサルティング業)

スタートは、「岸和田だんじり祭」の記録映像から始まった。
10月5日、大阪公開講座後の懇親会で「明日は岸和田のだんじり祭に招待されている」とおっしゃっていたのを思い出した。
「何でこの講座で・・・」と最初は思ったが、何となく頭の中でこれまでの講義内容と「だんじり祭」を紹介する中西先生の言葉を結びつけていたら、勝手な想像がわいてきた。

「岸和田だんじり祭」という象徴的な文化が、人々の心や行動を自然にまとめ、成功へのベクトルをつくり出しているような気がした。
中西先生のお話だと、それぞれの役割分担や秩序がきちんとできているらしい。
ただ、人々が理屈で行動を起こしているわけではないと思う。
きっと、「岸和田だんじり祭」という文化やブランドが好きなんだと思う。
好きという「感覚」が「感解知」を生み、自然と秩序が生まれているんだろう。
おもしろかったのは少女たちの髪型だ。
表現は年代性別によって違うけど、そこには共通するスピリッツがあるようだ。
規則で縛るのではなく、ブランドによりコンピテンシーをつくりだしているのがわかる。
時代をこえて生き残っていく企業の経営において、事実や理論だけでなく、未来に続く長期的視点での理念の構築と、それを「感覚(感解知)的に良い」と感じさせることが重要だということを改めて感じさせられた・・・。

こんなプロローグの次に、本題の“価値創造成果を、時代をこえて「成功実証事例」から学ぶ”であるから、「やられた」という感じである。

最初は、「時代の価値を自ら創り出せるものが生き残る」というテーマで、

≪企業永遠三軸≫
  • 1.時代とともにある
  • 2.時代の先を見通す目を持つ
  • 3.次代の価値を創り出す力を持つ
≪企業「成長」三軸≫
  • 1.期待を持って見られる
  • 2.憧れをもって見られる
  • 3.尊敬に値する企業存在になる

の説明を受け、経済的成長の前にきちんとした指針が重要であることを強調。

また、「2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する」という本の中から、「フクシマ後の日本には新たなビジネスが生まれるチャンスがある」ということを引用され、成熟した社会なりの変化を求めるべき・・・デジタルでなく有機的な変化に着目。
美的・知的変化というSTRAMD的思考が必要になることを示唆された。
さて、次はいよいよPAOSが「企業としての基盤やビジネススタイルを固めてくれた仕事」として紹介している「セキスイハイムのアイデンティティ・デザイン」の事例だ。

この事例紹介で印象に残っているのは、「いかに社内外に対する情報開発が重要か」ということであった。
当時、セキスイハイムのユニット工法は世界でも発想だけであった「住宅量産化」を初めて事業化するという社会に対する挑戦であった。
しかし、「こんな箱が家か?」というネガティブイメージを持つ生活者もおり、「人々の意識改革」が事業成功への鍵となった。

そこでPAOSが行ったのは、モノ・コトの両面からの情報デザインである。
コンセプトをしっかりと明確化させ、「モノ=ハイム(住宅)」「コト=ハイムイズム(思想)」をブリッジする情報開発を徹底的に行った。
特に社内には「4種の神器」という4つのファイルを作成し、徹底的な意識改革が行われた。

1.コンセプトブック
→「出発点」「共有できるもの」として、事業の優位性、意義などを明確に伝える。
2.ファクトブック
→「情報を整理して使いやすく」を目的とし、業界ファクトを整理し、更新できるように工夫。競合の戦略を読み取るツールとして作成。
3.ブランドアイデンティティマニュアル
事業の視覚的要素の関係が一目でわかるツリー図を作成。
社員一人一人が「全体としてのデザイン」を意識させることで、好き嫌いによる部分最適化を防ぎ、アイデンティティを強固にする。
4.ハイム・トータルライフ・コンセプト
未来予測と製品開発+イメージ効用システム+ユーザーコントロールシステム+マーケットクリエイトシステム+大家システムを組み合わせてビジネスが回る仕組みを考え、短期・中期・長期の事業目標を定めたもの。

驚きなのは、40年前につくられたものが、いまだに新人教育で用いられているということ。
いかに長期視点に立って未来のシナリオを描き切ったかがわかる。

今回の事例は、企業と社会の相互関与をきちんと考え、戦略、ファクト、心理的パフォーマンス(イメージマーケティング)、そして実際の事業が強い意志のもとに同一線上に置かれ、それを成功に導くためのSTRAMD的デザイン開発が見て取れた。